海がみたい

夏も終わり、八月後半
気まぐれな恋人の、気まぐれな発言
海なんてその辺に有りませんって言ったって聞きやしない
此処三日、ずっと言ってる言葉。
観念した中尉が俺達に休暇をくれた

それは4日だけの逃避行。


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後ろに大佐を乗せてひたすらペダルをこぐ
短いとはいえ夏は暑い。
ていうか、何で自転車?

「暑ィ……」

黒のタンクトップが熱を吸収して熱い
汗で諾々に為りながら
俺の背に凭れる恋人は風を受け涼しそうだ
背中だけ、貴方の温かみが感じる
顔が見えないから俺の汗で湿った貴方の背中が、やけに愛しく思えた。

「大佐、少し休みません?」

アスファルトの道路の端っこ。
やけにでかい木を見つけ木陰に座る
熱を帯びた黒髪をさらさらと撫でながら、車一つ通らない道路を眺める
時々通る風が気持ち良い…

「かき氷が食いたいな」

ふと、俺の横で木に凭れる貴方が言う
街から離れて、大分経つ
もうそろそろ隣街に着いても良いだろう。

「じゃ隣街までつっ走りますかあ」

自転車に跨がり、大佐が乗ったのを確認すると俺は勢いよくペダルをこぐ
此の間々何処か遠く、遠く、…貴方を連れ掠えたら。と思ったのは、多分、きっと、此の背中の温もりのせい。


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