かたんと
物音がする。
もう、止めれば良いのに。辛いのは、
二日前から薔薇屋敷に余所物が入り込んで居る。
何処から入ったのか、何が目的なのか。
実際屋敷とは名ばかりで、此処は宝石だの、金だのは一切無い只の馬鹿広い、空間でしかない。
となれば…目的は何なのか。
まあ、昔はそうでも無かったらしいが。
使用人も今や私一人だ。
昔の事は良く解らないし、教えてはくれない。
私も聞きはしない。
今、私の主人はエドワード様なのだから。
「エドワード様」
傍に近寄り、呼ぶ
すると本から目を離し、こちらを見遣る、真紅の瞳。
今だにこの眼は…苦手なんだ
「例の件ですが…如何なさいましょう?」
例の、リヴリー。
「…害は?」
ゆっくり口を開いて、ぱたん、と本を閉じた。
妙に厚い其れは、面白みが一つも無い。
「いえ。害は無い…様ですが」
「其れなら良い。放って置けば良い」
さらりと言って、本棚に本を仕舞う
「は…しかし」
「目障りなら、摘み出して起きなさい」
……はぁ。
摘み出して起けって、命令なら兎も角。
故意に摘み出したり何か出来ない。…同じリヴリーなんだから。
興味が無いんだ。害が無ければ放置。
害が有れば追い出すだけ。
エドワード様は無関心にも程が有る。
喜怒哀楽が無い。たまに怒ってるけれど…
一番、普通のリヴらしいのは『あの時』だけ。
「…っは」
湿った部屋の中に響く水音と、荒い吐息。
週に何度か、私は夜中にエドワード様の部屋をノックする。
放って置くとこの人は何ヶ月も射精しないから、定期的に射精させてやる。
…それだけ。
キスも、ハグも無い。射精するのはエドワード様だけで。
私はひたすら、フェラチオで射精を促す。
「…ぁ」
時折出る声に、じんと疼きを覚える。
普段調っている綺麗な黒髪は乱れ白いシーツに舞って
スラックスだけが中途半端に脱がされた姿は何処迄も妖美で。
ずっ、と吸うとびくっと微かに動いた。
舌で先端を突いて、裏筋へと這わす
双袋をやんわり手の平で游んで、咥内で自身を包む。
喉奥迄誘って、すぼめて
「っく…」
小さな呻きと共に白液の味が、広がる。
蜂蜜より甘くて、何よりも苦い味に欲情して堪らない。
そんな気持ちは抑えて、ハンカチを取り出してエドワード様の自身を拭う。
「おやすみなさい、エドワード様。良い夢を」
まだ眼が虚ろなエドワード様はん、と呟いたので、扉を締めた。
喉奥に絡まる苦みさえ、愛しくて仕方が無い。
例え、エドワード様の瞳に私が移って居なくとも。
自室に入り、ベッドに躯を埋める。
痛々しく頭を上げた自身が、汚らしく蜜を垂らした。